やせっぽち寄稿文

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【コラム】ゲスの極み乙女。『スレッドダンス』は今日も美しく響き渡る。


「理想論がたちまち人類最後の日みたいにされる 僕はどうか知らんが胸糞悪いのだけは感じるよ」

ゲスの極み乙女。の不朽の名曲『スレッドダンス』

スレッドダンス

スレッドダンス

  • ゲスの極み乙女。
  • J-Pop
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

2013年発売のアルバム『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』収録の楽曲でありながら、悲しいほどに現在の社会を捉えている。悲しいほどに、今だからこそ美しく響き渡る。毎日のように人々がネット上で誰かをつるし上げ嘲笑する、今だからこそ。

 

 

体温を持った"愛"への飢え

この曲を端的に言えば、それは”愛への飢え”である。

ただの愛ではない。ネット上のどこにもない、体温を持った”愛”だ。

「触れたいよ体温に 愛されたかった」

6年前の川谷絵音は心の底からそう唄っていた。

そんな彼の言葉は時を経た今、さらなる切なさをもって私の心に突き刺さる。当時はなかったはずの、どうしようもないやるせなさが曲から溢れ出す。

 

 

今の世の中は、はっきり言って生きづらい。なんとなく虚しい。

「寝静まった都会で 僕らはふんだんに忌み嫌いあう その結果の一つが こうして書き込む日々の現実」。

ネット上ではごく当然のように罵詈雑言が飛び交っている。誹謗中層のテキストが愉快に踊っている。誰かのSNSが炎上している。誰かが殺害予告を書き込んでいる。世の中そんなものだ。

人格否定、人権侵害、そんなもの今や当たり前だ。とっくにそんなもの見慣れてしまった。もうなんとも思わなくなった自分がいる。なんとも思わなくなった自分が怖い。

 

でもきっと誰だってそうだろう。

 

 

私だって、誰かをふんだんに忌み嫌っている。やるせない現実だってある。

勿論それをネットに書き込むことだって。みんなやっていることではないか。

そうすれば、世の中の誰かに反応してもらえる。受け入れてもらえる。

認めてもらえたような気がする。輝けるような気がする。

胸糞悪いのだけは感じるが、それでも”愛”に似た何かを得ることができるのだ。

それでいいではないか。

 

そう自分に言い聞かせてはみるものの、やはりそこはかとない寂しさを心の奥底で感じてしまう。この寂しさは、きっとネットでは満たされやしないだろう。

わかってる。きっと私たちが本当に求めているのは、”いいね”でも字面だけのリプライでもない。

今求めているのは、川谷絵音の歌った体温を持った”愛”なんだろう。

 

そうはわかっていても、今更この世の中で”愛”を追い求めることなんてできそうもない。

きっと明日も日々の現実をネットに書き込むのだ。

 

今の世の中は、どうしようもなく生きづらい。

 

 

"ゲス"なネット社会

「明かりをつけて一緒に踊ろうよ」

川谷絵音は楽曲の中で何度もこう繰り返す。

暗闇のなかでネットに逃げないで、さあ一緒に踊ろう。

体温のある、血の通った”愛”を分け合おう。

それは当時の彼の、心からの願いだったのであろう。

変わりゆく世の中への、最後の祈りだったのかもしれない。

 

しかし、その願いは残念ながら叶わなかった。

 

間違いなくネット社会の闇は大きく膨れ上がっている。

川谷絵音もまた、見るに堪えない炎上の渦中に突き落とされた。

さらに皮肉なことに、彼の騒動がネット社会の暴走の引き金を引いたのかもしれない。

あの時社会は目の色を変えて火に油を注いだ。

これまで見たことのない、冷たく凄惨な眼差しだった。

今の私たちは、そんな目を見てももうなんとも思わない。

 

この曲を収録したアルバムのタイトルは『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』

もはや私たちは、明かりをつけて踊れやしないだろう。一緒になって許しあい、受け入れあうことなどきっともうできやしない。

 

もう”ゲス”なのだ。私たちは。

 

 

だけどまだ、と私は思う。

まだきっと、”愛”を捨てるには早すぎる。

 

 

「明かりをつけて一緒に踊ろうよ」

今更になって、川谷絵音の叫びをすべての人が聞き入れることは難しいことなのかもしれない。川谷絵音に言われたって。そう思う人だっているだろう。

それこそこれは理想論であり、「理想論がたちまち人類最後の日みたいにされる」時代になってしまったのかもしれない。

 

 

だけど届いてほしい。

もう一度だけ、この美しい歌に耳を傾けてほしい。

私たちが本当に求めているのは、ネット上の誹謗中傷で得られる快楽でも、字面だけの愛の言葉でもないはずだ。

私たちはただ、体温に愛されたいんだ。

 

 

「明かりをつけて一緒に踊ろうよ」

彼の歌声は今日も、悲しいほどに美しく響き渡っている。

 

 

※当記事はrockinon.com運営のサイト「音楽文」にて2019年9月24日に掲載された記事の内容を一部改変したものです。元記事の作者は当ブログ管理者である骨助です。

 

 

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