やせっぽち寄稿文

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【indigo la End/花傘】歌詞の意味を考察 タイトルの意味と”君”の「死」について考える


indigo la End「花傘」

5th Album「濡れゆく私小説」収録曲で、現在YouTubeではMVも公開中だ。


indigo la End「花傘」indigo la End Official YouTube Channel より

別れを歌ったラブソングかな、なんて思ったのもつかの間、突然の「お墓参り 行けなくてごめん」という歌詞で度肝を抜かれたのはきっと私だけではないだろう。衝撃的な展開に思わず耳を疑ってしまう、「死」を扱った切ないラブソングである。

ここではその歌詞に注目して楽曲の魅力を紐解いていきたいと思う。

あくまで私個人の解釈であり、解釈を押し付けるものでは決してないということを予めご留意願いたい。

 

 

 

タイトル「花傘」の意味

「花傘」バーベナ(和名 美女桜)という花の別称である。そしてバーベナの花言葉は「魔力」「魅力」

魅惑を払いきれない
がらんどうだった身体が
染まりきった
先が怖いけど

(中略)

花のようなベイビーガール
いつも見てる先はそっぽ

(中略)

君はまだ僕の花傘

花傘 作詞 川谷絵音

楽曲の中で主人公は”君”に強い魅力を感じているため、「惹き付けて離さないような魅力を放つ様子」「花傘(バーベナ)」と重ね合わせて表現しているのだろう。

また「花傘」はあくまで花の別称であって傘ではないのだが、楽曲中では”君”はあたかも傘であるかのように扱われている。

殺伐な雨が君を許さなかった日から
恋したんだよ
勝手に君を差したりしてさ

花傘 作詞 川谷絵音

indigo la Endの世界観に溶け込んだ、川谷氏らしい奇抜な言葉遊びである。

 

 

歌詞考察

幕電に期待しちゃう
君はまだ僕の花傘
お墓参り
行けなくてごめん

花傘 作詞 川谷絵音

「お墓参り 行けなくてごめん」

楽曲終盤に登場するこの歌詞から読み取れるように、楽曲中で繰り返し登場する”君”という人物はすでに亡くなっている。なんとも切ない設定である。

ここではその前提を基に、歌詞を細かく考察していく。

 

1番

曇りガラスで隔てられてた
もっと見たくて
恋しちゃったんだ

ツバメ飛ばした 君の裸に
見合うような
僕になれるかな

花傘 作詞 川谷絵音

曇りガラス越しに見るように、”君”の魅力の正体を捉えられていなかった主人公。もっと”君”を知りたくなって、それは恋心へとつながっていく。たとえ”君”が死んでしまったとしても。

「ツバメ飛ばした 君の裸に」

ツバメには実は「年上の女と愛人関係にある若い男」といった意味がある。主人公と”君”が愛人関係なのかはさておき、ツバメを飛ばすような、愛人関係の男が現れるような、得も言えぬ魅力が彼女にはあるのだろう。

また、このツバメを使った表現は後の歌詞の伏線にもなっている。

 

 

魅惑を払いきれない
がらんどうだった身体が
染まりきった
先が怖いけど

花傘 作詞 川谷絵音

主人公は ”君”との恋から逃れることができない自分が、これからどうなってしまうのかを恐れている。このままでは次の恋に進めない。まして彼女は亡くなっているのだから復縁など起こりえない。早く彼女の死を受け入れて、恋心を捨ててしまうのが得策である。

しかしながら「染まりきった 先が怖いけど」とある。

怖いけれど、このまま彼女に染まっていくことしか彼にはできないのだ。

 

花のようなベイビーガール
いつも見てる先はそっぽ
気付かないふりする度に心がちと濡れる
さよならの雨がパラパラと降る予報です
小雨のうちだったら
心拭くのもまだ簡単なのに
できない

花傘 作詞 川谷絵音

バーベナの花言葉のように、「魅力」を放つベイビーガール。

「いつも見てる先はそっぽ 気付かないふりする度に心がちと濡れる」なんて歌詞は、あたかもよくある失恋ソングのような場面を想起させる。しかし知っての通り、彼女は死んでいるのだ。もう二度とこちらを見ることなど無い。

ここでは彼女の死を受け入れていない主人公が、あえて死とは結び付かない言い回しをすることで正気を保っているというか、心を落ち着かせているのではないだろうか。

「気付かないふりする度に心がちと濡れる」

なんとも切ない歌詞である。

彼女がそっぽを向いていることに気付かないふりをするたびに悲しみを覚える。どこかで死という現実が頭をよぎる。

「さよならの雨が」以降の歌詞の考察は後述する。

 

 

 

2番

恋の宵立ちさせない傘が
邪魔だなんて
まだ思えないんだ

花傘 作詞 川谷絵音

宵立ちとは、宵のうちに出発すること。傘は「花傘」、”君” の存在を指していると思われる。

本来ならば、主人公は早く今の恋心を捨てて次の恋へと歩き始めるべきなのかもしれない。しかし彼は心にこびり付いた”君”の存在を捨てることなどできないのだ。まして「邪魔だ」なんてまだ到底思えない。死んだからといって、好きな人のことを簡単に忘れるなどできるはずがない。

 

夜一夜(よひとよ) 止まなくて
それでも想いながら
低く飛んだツバメを見てた

花傘 作詞 川谷絵音

「夜一夜」は一晩中。

「止まらない」の主語がないので想像するほかないが、ここでは「涙」か「止めどなく溢れる感情」を描写しているものと思われる。

ここで1番で登場したツバメが再び登場。「低く飛んだツバメ」は雨が降り始める前兆であり、サビの「さよならの雨がパラパラと降る予報です」という歌詞を強調していると思われる。予報は雨だしツバメも低く飛んでいる。間違いなく「さよならの雨」は降るのである。

 

2番のサビの歌詞考察は繰り返しになるので割愛。

 

幕電に期待しちゃう
君はまだ僕の花傘
お墓参り
行けなくてごめん

花傘 作詞 川谷絵音

幕電とは夜間、雲中放電により雷雲自体が光って見える現象のこと。

「君はまだ僕の花傘」

主人公はいまだ”君”という傘を手放せずにいる。恋の宵立ちを許してくれない傘を大切にし続けている。

ここで後回しにしたサビの歌詞に戻りたい。

さよならの雨がパラパラと降る予報です
小雨のうちだったら
心拭くのもまだ簡単なのに
できない

花傘 作詞 川谷絵音

ツバメの動きからも、降りだすことは確実な「さよならの雨」

私個人の解釈としては、この「さよならの雨」は恋愛的な”君”との別れを指しているのだと思う。つまりこの「さよならの雨」を浴びることは ”君” の死を受け入れることであり、まさしく「さよなら」と彼女に別れを告げることを意味しているのではないか。

そして小雨のうちであれば、まだ彼女に染まり切っていない今のうちであれば、この雨に打たれてもびしょ濡れになることはない。悲しみに暮れ涙を流すことはあっても、まだいくらか簡単に立ち直れる程度で済むはずだ。

しかし彼はまだ花傘を手放すことができないでいる。「さよならの雨」に濡れるのを拒み、彼女により一層染まろうとしているのである。

更に彼は「幕電」を期待している。幕電が起こるくらいなのだから、きっとそれはもう小雨ではないだろう。しかしそれくらい雨が降っててしまえばもう傘を手放す理由はなくなるはずだ。”深い悲しみに暮れたくはないから”という、彼女の死を受け入れなくていい理由ができるのである。

だからこそ彼はいまだ ”君” の死を受け入れていないし、”君”のお墓参りにも行けていないのではないのだろうか。

 

殺伐な雨が君を許さなかった日から
恋したんだよ
勝手に君を差したりしてさ
いなくなったベイビーガール
優しく鳴る音で今日も
花のような裸を考えて
切なくなったりするんだよ

花傘 作詞 川谷絵音

別れという運命が”君”の死によって突き付けられてからも、彼は”君”という傘を勝手に差して別れを拒んだ。

「殺伐な雨が君を許さなかった日から 恋したんだよ」

君が死んでから恋した、というのは不自然であるから、おそらく君が死んでからより一層君が恋しくなった、といった意味合いであろう。

そして今日も、いなくなった”君”のことを考えて切なくなったりする。

どれだけ考えたって、どれだけ愛したって、君は二度とこちらを向いたりはしない。戻ってなんか来ない。

ただの失恋ソングではない。「死」という事実を突きつける、切ない切ないラブソングなのである。

 

 

 

感想・まとめ

「君はまだ僕の花傘」

花傘(バーベナ)の花言葉は「魅力」。楽曲の中で主人公は、花傘を手放せないでいる。恋人の魅力を忘れられずにいる。たとえ彼女が死んでいたとしても、彼は”君”に恋しているのだ。「邪魔だ」なんてとても思えるはずがない。

 

そんな主人公の心情は、歌詞にも反映されているように感じる。終盤まで彼女の死を予感させない言葉選びは明らかに意図的なものだ。

 そして楽曲終盤で「死」という強烈な事実を聴き手に叩きつける。聴き手の心が呆然とする。そして「死」を知った上で歌詞を聴き直したくて、もう一度曲を聴く。何度でも何度でもリピートする。「死」という前提を踏まえて歌詞を読むと、より一層強い切なさに襲われる。なんてことない言葉にも切なさが漂い始める。

死を歌ったindigo la Endの切なすぎるラブソング「花傘」。是非もう一度聴いてみていただきたい。

 

indigo la Endの少々昔の曲で、「瞳に映らない」という楽曲がある。


indigo la End - 瞳に映らない indigo la End Official YouTube Channel より

 「死」を歌っており花傘同様こちらもかなり切ない楽曲なので、併せておすすめさせていただきたい。

 

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