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【歌詞解釈】ヨルシカ「だから僕は音楽をやめた」/ エイミーの最後の叫びを紐解く


2019年4月5日発売、ヨルシカで「だから僕は音楽をやめた」。壮大な映画の最終回のような物語性のある一曲です。音楽をやめた主人公の、最後の叫び。希望と絶望。www.youtube.com

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歌詞解釈

※終始断定口調で書いてますが、あくまで私個人の解釈です。人によって様々な解釈があって当然だろうと思います!

 

 

間違ってるんだよ わかってるんだ あんたら人間も 本当も愛も救いも優しさも人生もどうでもいいんだ 正しい答えが言えないのだって防衛本能だ どうでもいいや あんたのせいだ

僕だって信念があった 今じゃ塵みたいな想いだ 何度でも君を書いた 売れることこそがどうでもよかったんだ 本当だ 本当なんだ 昔はそうだった

ヨルシカ 「だから僕は音楽をやめた」 作詞 n-buna

曲を解説するにあたり、先に終盤の歌詞を切り取っておきます。

この曲は、主人公の過去の信念と、現在の冷め切った心情の葛藤の歌に他なりません。

「昔の自分」というのは、売れることなんて微塵も気にせず、ただ「本当」や「愛」や「世界」のことを歌っていた自分「君」はそうした「本当」や「愛」を描く上で、その象徴として扱われています。

そして「今の自分」は、当然その逆。売れることこそが全てで「本当」とか「愛」とか「世界」とか「音楽」とかもうどうでもいい。この世界の目に見えないものに対する絶対的な失望感。

そして前提として、「君」という人物とは離れ離れの状態です。詳しくは後述しますが、これを踏まえたうえで物語は進行していきます。

「だから僕は音楽をやめた」。MVから察するに、彼は音楽をやめると同時に、人生すらも幕を閉じてしまいました。

当然その背景には、音楽、および人生をやめなければならなくなった明確な理由があるはずです。

理由を読み解くために、1番の歌詞からゆっくり見ていきます。

 


 

考えたってわからないし 青空の下、君を待った

風が吹いた正午、昼下がりを抜け出す想像

ねぇ、これからどうなるんだろうね 進め方教わらないんだよ

君の目を見た 何も言えず僕は歩いた 

ヨルシカ 「だから僕は音楽をやめた」 作詞 n-buna

愛とかこれからのことを考えたって仕方がない。答えを知りたい僕は君を待った。

 

「考えたってわからない」。これは勿論、先述の歌詞で登場した「本当」や「愛」、「世界」「苦しさ」「人生」を指しています。世の中の様々な人が必死に考えるそうした答えのない概念。そんなもの考えたってわからない。

「君の目を見た 何も言えず僕は歩いた」

君の目を見たときに、何も言えない状況とはどんな状況でしょうか。その人物とまっすぐ向かい合えないとき、つまり後ろめたい気持ちがある時。主人公は「君」という人物の想いとは相反する言動を、この詩を書いている時点ではとっているようです。

また、主人公は考えたってわからないから「君」を待っています。よってここで、「君」という人物がその答えを教えてくれる存在であることが伺えます。「愛」や「世界」や「人生」の答えが「君」という存在であると。

 

 

考えたってわからないし 青春なんてつまらないし 辞めた筈のピアノ、机を弾く癖が抜けない ねぇ、将来何してるだろうね 音楽はしてないといいね 困らないでよ

ヨルシカ 「だから僕は音楽をやめた」 作詞 n-buna

続きの歌詞。

先ほど同様、愛とか人生とかの答えを考えたってもう仕方がないし、青春だってつまらない。完全に冷め切ってしまった主人公の心情が読み取れます。

「ねぇ、将来何してるだろうね」以降も恨み節。さも他人事のように音楽を諦めています。

 

 

心の中に一つ線を引いても どうしても消えなかった 今更なんだから なぁ、もう思い出すな

ヨルシカ 「だから僕は音楽をやめた」 作詞 n-buna

どうしても消えないものは「音楽」という存在であり、「本当」や「愛」を追い求めてしまう心。そして自分に必死に言い聞かせる。「もう思い出すな」。考えたってわからないからです。

無理やり音楽を忘れようとする主人公。音楽をやめなければならない理由があることがうかがえます。

そしていよいよサビへ。

 

間違ってるんだよ わかってないよ、あんたら人間も 本当も愛も世界も苦しさも人生もどうでもいいよ 正しいかどうか知りたいのだって防衛本能だ 考えたんだ あんたのせいだ

ヨルシカ 「だから僕は音楽をやめた」 作詞 n-buna

攻撃的な歌詞が印象的。ここで特筆すべきは、「あんたら人間も」 と書かれているところ。当然「自分も」間違っているというわけです。

人間は不安な心を鎮めるために、愛とか人生の正解を探そうとする。でもそんなのは自分を守るためにやってるだけで、実際はどうでもいいことなんだ。強い口調で、現在の主人公の価値観を主張しているわけです。

「考えたんだ あんたのせいだ」。

「あんた」は紛れもなく「君」のことです。愛とか正義とかの象徴だった「君」がいなくなってから、主人公はその抽象的な概念について改めて考えさせられた。そしてわかったのが、「考えたって仕方がない」ということだったようです。

続けます!

 


 

考えたってわからないが、本当に年老いたくないんだ いつか死んだらって思うだけで胸が空っぽになるんだ 将来何してるだろうって 大人になったらわかったよ 何もしてないさ

ヨルシカ 「だから僕は音楽をやめた」 作詞 n-buna

2番は、ひたすら2番のサビに向けた心境吐露。

追い求めたって答えはないし、将来に期待したって何か変わるわけでもない。でも死にたくはない。どこにも逃げ場のない、生きる苦しさが歌われます。

 

 

幸せな顔した人が憎いのはどう割り切ったらいいんだ

満たされない頭の奥の化け物みたいな劣等感

ヨルシカ 「だから僕は音楽をやめた」 作詞 n-buna

2番のサビにつながる大切なパート。

ここでの「幸せな顔した人」は昔の、「君」が存在した頃の自分に重なる部分があります。「愛」とか「人生」とか、そんな取り留めのないもの追い求める人物。

 

今の主人公は、それが無意味で間違いであるという事実に気づいてしまっています。なのに、それに気づかず呑気に「愛」とかを追い求めている人のほうが自分より幸せそうにしている。主人公にとって受け入れがたい状況です。処理しきれない苦しさを背負わされている。

これを踏まえて、2番のサビに入ります。

 

間違ってないよ なぁ、何だかんだあんたら人間だ

愛も救いも優しさも根拠がないなんて気味が悪いよ

ラブソングなんかが痛いのだって防衛本能だ

どうでもいいか あんたのせいだ

ヨルシカ 「だから僕は音楽をやめた」 作詞 n-buna

これが主人公の本音なのだろうと思います。

「愛も救いも優しさも根拠がないなんて気味が悪い」。根拠はないけど、そうしたものに全く依存せずに暮らすことはどうしようもなく不安なことです。今の主人公がそうであるように。だから、ありもしないそれらを追い求めて安心しようとするのは防衛本能なんだ。

愛とかを追い求めるなんて間違っている。そう気が付いてしまった主人公ですが、やはり捨てきれない人間としての希望は抱えているようです。

でも、「どうでもいいか あんたのせいだ」。

間違いではないかもしれないけど、結局今の主人公にはそんなことはどうでもいい。

ここからは、主人公の達観した諦めの境地が語られることとなります。

 

 

 

考えたってわからないし 生きてるだけでも苦しいし 音楽とか儲からないし 歌詞とか適当でもいいよ どうでもいいんだ 間違ってないだろ 間違ってないよな

ヨルシカ 「だから僕は音楽をやめた」 作詞 n-buna

当然、昔は全く逆の考え方をしていました。でも、「君」という存在が消えた今、そんなものはどうでもいい。だって、「愛」を追い求めたって結局答えにはたどり着けないから。

ここでの「間違ってないよな」の歌い方が非常に印象的。今にもかき消されそうな、今にも泣きだしそうな、必死に自分に言い聞かせているような、そんな声で歌われています。

つまり、まだ主人公は、音楽を諦めたくはないんです。「歌詞とか適当でもいい」だなんて思いたくはないし、希望を追い求めることだって間違ってなんかいない。でも、どれだけ考えたってなにも解決しなかった。だから、必死にそれを諦めようとしているんです。

 

間違ってるんだよ わかってるんだ あんたら人間も 本当も愛も救いも優しさも人生もどうでもいいんだ 正しい答えが言えないのだって防衛本能だ どうでもいいや あんたのせいだ

ヨルシカ 「だから僕は音楽をやめた」 作詞 n-buna

ここでも一番同様、「あんたら人間」も「過去の自分」も間違っていると歌います。これまでのどの歌詞よりも力を込めて。

そして「正しい答えが言えないのだって防衛本能だ」という歌詞が心を抉ります。

「わからない」ではなく、「言えない」。愛や優しさの答えなんて本当はとうにわかっているはずなんです。

ここでの「正しい答え」は、主人公が気が付いてしまった「そんなもの実際には存在しない」、あるいは「そこに希望などない」といった、受け入れたくない現実ではないでしょうか。それを受け入れてしまえば、主人公同様苦しい人生を送らないといけない。だから誰も正しい答えなんて言えやしないんです。

主人公は「君」がいたころ、そんな現実を考える必要なんてなかった。「君」が希望であり、愛であり、人生だったからです。答えは君が教えてくれた。でも君はもういなくなってしまった。いくら必死に、その全てを信じて「君」を描き続けたって、見えないものを追い続けたって、次第に「君」を忘れていってしまった。「君」がいない今、「愛」も「正しさ」も「優しさ」も根拠なんてない虚像だったのだと気が付いてしまった。「あんたのせい」で。これが主人公が「音楽」という希望から逃げ出してしまった理由でしょう。気づいてしまったんです。気づいてはいけない現実に。

 


 

僕だって信念があった 今じゃ塵みたいな想いだ 何度でも君を書いた 売れることこそがどうでもよかったんだ 本当だ 本当なんだ 昔はそうだった

ヨルシカ 「だから僕は音楽をやめた」 作詞 n-buna

昔はただ、何度でも「君」を書いていたんです。「君」が僕の全てであり、希望であり、音楽そのものであったからです。昔はそうだった。

でも今は違う。もう「君」のことを忘れつつある。その存在を見失いつつある。「君」も「本当」も「愛」も追い求めたってたどり着けやしない、という事実に気づいてしまったし、もう歌詞なんてどうでもいいし、だったらいっそ売れることの方が大切なんじゃないかと思えてしまった。考えたってもうわからないから。「君」と楽しんでいた音楽とか、昔の信念なんてものは塵のように思えてしまった。もう全部がどうだっていい。

 

だから僕は音楽を辞めた

 

他の楽曲との繋がり

ここまでの解説で、「君を失った」とか「君を忘れてしまった」とか歌詞にないことを書いてきたわけですがそれにもちゃんと理由があります。

この曲は一連のストーリーのあるコンセプトアルバム「僕は音楽をやめた」の最終盤にあたるのです。ここではその考え方に則って、既にMVが公開されている「藍二乗」「パレード」との関係性を改めて考察しておきたいと思います。

藍二乗

ここでは、「人生は妥協の連続なんだ」と言いつつも、ただまっすぐに「君」を描き続ける主人公の姿が描かれています。 「君」の名は「エルマ」。「君だけが僕の音楽なんだ」。主人公にとっての音楽そのものが「エルマ」です。人生は妥協の連続だ。そんなことわかりきっていたって、「エルマ」だけは主人公の光だった。

かつて描いた夢がいつか時効になってしまうことを感じつつも、まだ希望を捨ててはいない。「君」だけを描き続ける人生に美しさを見出している。昔の主人公の信念が見える一曲です。

「春の空に花泳ぐ」と「桜」を暗示しておくことで、後にこの主人公の思いが散っていってしまうことを実は示していたのかな…なんて思ったり。

 


パレード

ここでは、なんとか「君」を、「君のいない今の温度」を忘れまいと歌う主人公の姿が描かれています。

「君の指先には多分神様が住んでいる」「君の書く詩を ただ真似るだけの日々を」。昔歌詞を書いていたのは「エルマ」でした。だけどもう「エルマ」はいない。

もう少しだけでもいいから、「君」を忘れないでいられるように。なんとか君の描いた「愛」や「本当」を歌おうと、その存在を確かめようと、君がいるはずの「心」で君の書く歌詞を真似て、だけど「君」のいない「一人ぼっちのパレードを」。

だけど、それでも、主人公は「君」を忘れてしまった。その存在はもういなくなり、いくら追い求めたって辿り着けない答えを知ってしまった。「君だけが僕の音楽なんだ」。でも「君」はもういない。僕の心にも「君」はもういない。

だから僕は音楽をやめた

 

 

 「最後の希望」か「遺恨」か

ある音楽紹介サイトでこのような見出しを見かけました。この曲は果たして「光」なのか「絶望」なのか。ものすごく興味深いテーマです。

主人公は確かに「音楽をやめた」。いや、やめるために、この曲を世界に残しました。もちろん最後のサビで読み取れるように、愛なんか幻想だって叫んではいます。しかしそれはあくまで意思表示であって、2番の歌詞はそうではない。

しかも主人公は「音楽をやめる」という選択をとった。これからは今の信念を、「絶望」を歌にしてもいいはずなのに、「音楽」というものから身を置いた。主人公は「音楽」という世界を「君」がいたころのまま、希望にあふれた状態のまま残したんです。ある意味で彼は、「音楽」という世界に最後の望みを託したのではないか…そう思えてなりません。

再び同じ題材で夏にも新曲が発売されるようなので、そちらを待ちたいと思います!

 

追記

アルバム「エルマ」が発売されました。改めて「だから僕は音楽をやめた」についてもこちらの記事で考察しておりますので是非ご覧ください…!

 

 

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だから僕は音楽を辞めた

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  • ヨルシカ
  • ロック
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